見上げれば真っ黒なキャンパス
無数の蛍光塗料が飛び散っている
いつの時代だかの何処かの人は
あれが人や動物なんかに見えたらしい
CGはおろか紙とペンも持たずにすぐそこにある
無限のキャンパスに絵を描いた
死んだって腐りもしないような
時間が止まったキラキラな世界を見上げる期限付きの命たち
疲れて目薬さすように
めまぐるしい一日からやっと逃れている
眠れない日くらい誰にだってあるさ
だから浮かぶ点描画に名前が付けられているんだろう
屋上の恋人たちでも
瓦礫の隙間から覗く少年兵でも
同じ絵を探せるんだよ
僕らは無限の世界のほんの一握り
小さく愛し合い、奪い合う
そんなこの砂粒がこんなに重いのは
きっと終わりを持っているから
死んだって腐りもしないような
時間が止まったキラキラな世界を見上げる期限付きの命たち
空を映すように
眠った街は瞬いている
「死んだって」で終わってしまうような
少し冷たくてバラバラな世界を確かに踏みしめる命たち
祈るように見上げる僕は無言の空に
胸の何処かで期待なんかしちゃっているんだろうな
でも何故か良い夢を見られそうだ
日が昇る前に
そろそろ眠ろうか