天秤

空を眺めているのは自殺志願者

飛び降りたいのかそれとも飛び立ちたいのか

逃げだ、不孝だなんだと否定して「生きてりゃ良いことある」と言う

それじゃあ、あんたは明日を保証してやれんのかい

 

天秤の上に命を二つもちろん傾きはしないさ

量るべきは運命だとしたらどうだろう

 

憂うだけじゃ変わらなくて

寄り添うだけじゃあたためられない

きっと何処か他人事で

遠くの泣き声は聞こえないふり

 

ゴミを漁っているのは子連れ捨て猫

宝探しかそれとも明日を探しているのか

迷惑そうな目を向けるのは人間さ

同じように脈打つ鼓動を同じようには扱えない

 

傾かない天秤に乗る命が 自分のものだとも思わずに

 

片手間に拭える涙はなく

お手軽に救える命もない

きっと何処か他人事で

近くの叫び声も見て見ぬふり

 

誰だって誰かより自分が大事

誰だって誰を見捨てたいわけじゃない

高く積み上げられた幸福の上からじゃ

声も手も届かない

かといってここから降りられもしない

 

天秤の上に命を二つ

もちろん傾きはしないさ

ならば三つ目はどこに置けばいいの

 

泥棒だって神に祈る

少年少女も人を殺す

愛や平和を願うのは

未だに手に入っていないから

手造りの物差しで測った正義が争う中で終わりを

祈るのはまだ命を愛せるから