ローファイメモリー

 

ああ あの頃は良かったな なんて思う日がこんな

僕にもやってくるなんてまさにあの日のボクは思わなかった

 

他愛もないはずのワンシーン なぜかあれこれ思い出す

ついついニヤニヤしてしまう でも時計も街も回っていく

 

バカが一人  世界の隅

 

すべてのものが期限付きだ 数字を書いて貼ったって

失うことでしか僕ら気付けない それもこれもわかってる

 

クソみたいな毎日だった ため息で塗りたくられた

可もなく不可もない記憶も今ではなんだか味があるよ

 

懐かしい帰り道の標識はあの頃と同じ方向いてまだ錆びてる

 

カランコロンカラン 缶が始まりを告げる音

チリンチリン 自転車のベルを奏で合う音

あの頃のボクがなんとなく羨ましくて

「行こうあの公園」と思ってももう遅い

ブランコの乗り方も忘れたよ

 

片手で写真も動画も残してしまえる現代に

あえて8mmフィルムを使うようなものなのかもしれない

 

片手間に音楽だってタダで聞こえる現代に

あえてレコードを買うようなものなのかもしれない

 

優しいノイズが心地よくて

 

カランコロンカラン 缶が道に捨てられた音

チリンチリン 自転車のベルを鳴らされた音

あの頃の僕なんてとっくにいなくなってて

擦り切れて草臥れて大人になって

思い出だけが優しくする

 

可もなく不可もない記憶も優しいノイズが誤魔化していく

無気力な日々も消したいボクも優しいノイズが誤魔化していく

 

あの標識が立ちはだかってこの先行き止まりだって言うんだ

優しいノイズよ誤魔化してよ クソみたいな今の僕を   早く

 

カランコロンカランコロンカラン

チリンチリンチリンチリンチリン

 

カランコロンカラン 昔のようには響かないけど

チリンチリン 時々立ち止まれば聞こえるよ

あの頃のボクはいつだって羨ましいけど

「あの頃のボク」になって初めて輝くのかな

讃えるようにノイズが照らして

 

あああの頃は良かったな

なんて思う日がこんな

僕にもやってくるなんてまさに

あの日のボクは思わなかった

 

そんな今日この頃の僕も

うだうだ言いながらもいつか

あの日のボクになったとき

輝くのなら生きるのも悪くはないな