小さなメシア

 

俯いた背広の男は7センチほどの白い筒を燃やし

煙を吸い込みながら

破れた制服の少女は親の目を盗み背伸び味の
アルコール飲み込みながら

何かを吐き出していた
延びた手を掴んだのは人のぬくもりではなかった

「救ってよ」 声が届いた気がした
「救ってよ」 応えるように
そこにいた小さなメシア

指の先ほどのカプセル
両耳を塞ぐイビツな和音
真っ赤な存在の証明
脳を腐らせる秘事
拳に走る痛み
簡単に手に入るなら何でもいいんだ

何かを吐き出したいだけ すべて忘れたいだけ

「救ってよ」 声は届きはしないさ
「救ってよ」 応えてくれたのは
いつも僕の両手だけ

何が僕らを癒して 何が僕らを許すのだろう

「救ってよ」 その灯が消えないのなら
声は届かなくたっていい
「救ってよ」 救いの手を掴むのは
紛れもない僕だ